法人決算の決算期末における注意点 1
法人決算の決算期末における注意点は数多くあります。このコラムでは中小企業の皆様に、これらの注意点を、執筆時点での税法に基づいてではありますが、出来るだけタイムリーにかつわかりやすくお伝えしていきます。中小企業の皆様の「決算対策」・「決算チェックリスト」等に活用していただければ幸いです。
初回は、一定の固定資産を取得した場合に適用可能な特別償却と法人税額の特別控除の注意点について説明します。
決算期末における特別償却・法人税額の特別控除の適用の注意点
中小企業がよく利用する特別償却又は法人税額の特別控除の制度として中小企業投資促進税制(※1)があります。また、その取得した固定資産が特定生産性向上設備等に該当する場合は、特別償却・税額控除ともに上乗せ措置があります(※2)が、特定生産性向上設備等を取得した場合の上乗せ措置は平成29年3月31日でその期限が終了します(※3)。
そして、これらの特例に限らず特別償却・法人税額の特別控除の適用を受ける場合において、対象となる設備に該当するかどうかの判定はもちろん大事ですが、固定資産を決算期末直前に取得して、特別償却・法人税額の特別控除の適用を受けようとする場合は、その他に次の点に気を付ける必要があります。
※1 中小企業投資促進税制
適用法人:資本金1億円以下の中小企業者等
適用期間:平成29年3月31日まで
(平成29年税制改正(このコラムの執筆中は国会審議中。以下同じ。)で平成31年3月31日まで延長となる予定)
対象資産:160万円以上の機械装置など
特別償却:30%
税額控除:7%(資本金が3,000万円超の中小企業は除く)
※2 特定生産性向上設備等の上乗せ措置
(中小企業投資促進税制の限度額に替えて下記の限度額)
対象資産:先端設備・生産ライン等の改善に資する設備
特別償却:即時償却
税額控除:10%(資本金が3,000万円以下の中小企業)
7%(資本金が3,000万円超の中小企業)
※3 平成29年税制改正で手続き・対象資産などを一部変更し、中小企業経営強化税制として平成29年4月1日から施行される予定
適用できる事業年度は、対象設備を事業供用した事業年度
特別償却・法人税額の特別控除の規定は、法人税法の条文では、「~までの期間に、~を取得し、事業の用に供した場合は~」という表現になっています。具体的には、「決算期末までに対象固定資産の納品が終了しているだけでなく、きちんと稼働するかどうかの検収を終了し、法人の業務の通常のオペレーション内で使用していること」と解釈するとよいと考えます。
特に問題になりやすいのが機械装置で、機械装置を取得する場合、状況によっては納品日と検収終了・稼働開始日が一致しないことがあるからです。仮に、3月31日に納品、4月1日に納入業者の担当者が来て試運転を行い同日に検収終了・稼働開始となった場合は、4月1日の属する事業年度で適用となります。また、3月31日に納品、同日に納入業者の担当者が来て試運転を行ったが、後日の微調整が必要となり同日中に通常のオペレーション内での稼働の開始ができず、4月3日に再度納入業者の担当者が来て試運転を行い、同日に晴れて検収終了・稼働開始となった場合は、4月3日の属する事業年度で適用となります。
この場合、さらに気を付けなければならないのが、この平成29年3月31日で適用期限が終了する特定生産性向上設備等のように適用期限終了日=決算期末の場合は、事業供用の日が決算期末に間に合わないとその適用自体を受けられなくなるということです。例えば、中小企業投資促進税制と特定生産性向上設備等の両方に該当するため、即時償却を行い取得価額の全額を損金計上しようとしても、翌決算期では特定生産性向上設備等の特例は終了しているため、事業供用が翌決算期となってしまうとともに中小企業投資促進税制の30%の特別償却しか適用できなくなります。
決算期末で適用ができた場合でも、税務調査対策のためにきちんと資料を残しておく
納品→検収→正常稼働が決算期末までに間に合った場合でも、決算期末ギリギリの事業供用は税務調査で調査官に資料の提示・説明を求められる可能性が高いです。そのため、納入業者と納品・正常稼働を確認したことを証明する納品書・検収書の保管、機械装置はその他に稼働状況を記録した運転記録簿、その機械装置を使用して製作した製品・仕掛品などがあることがわかる作業日報・生産管理記録などを保管することが、税務調査対策として重要です。