給与所得者・年金所得者の所得税の確定申告 3
給与所得者・年金所得者の方が行う確定申告のポイントの紹介の最終回です。今回は、給与所得者・年金所得者の方が行う確定申告について、知っておくとよいポイントと注意すべきポイントをランダムに挙げてみました。
(注:このコラムは、給与所得者・年金所得者の確定申告にポイントを絞っているため、所得税法の取扱いから抜粋し、かつ理解しやすいように平易な書き方をしております。そのため、個別の事実の解釈・適用についてはコラムの内容と異なることがあり得ることをご了承ください。)
知っておくとよいポイント
1.選択できる所得控除は家族の中で所得が大きい人で適用する
所得税の税率は所得が大きい人ほど税率が高い仕組みになっています。そのため、所得から差し引く所得控除は所得が大きい人の方が節税効果は大きくなります。
例えば、生計を一にする親族の扶養控除、及び生計を一にする親族の医療費控除(※)は、同居家族の中で一番所得が大きい人の確定申告で控除をすると、ご家族全体で考えると税額を減らすことができます。また、年末調整で受けた扶養控除を確定申告でやり直すこともできます。
※医療費控除は、社会保険料控除(3.参照)のように所得控除を受ける者が実際に支払ったどうかを問いません。
2.年末調整で受けなかった所得控除は確定申告で受ける
大学生のお子様のアルバイト収入、又は配偶者のパート収入の金額を気にして年末調整で扶養控除・配偶者控除(又は配偶者特別控除)の適用を受けなかった場合に、実額が確定しこれらの所得控除を受けることができることとなったときは、1月31日までであれば勤務先に年末調整のやり直しを依頼することができますが、間に合わなかった場合は確定申告でこれらの所得控除を受けることができます。
3.20歳以上の親族の国民年金は支払った者が社会保険料控除を受ける
生計を一にする20歳以上の親族の方の国民年金を支払った場合は、その支払った方が社会保険料控除の適用を受けることができます。例えば、大学生のお子様の国民年金を父親が支払った場合が該当します。社会保険料控除は支払った金額の全額が控除されるため、節税効果は大きいです。また、2.と同様に年末調整で受けることができる所得控除のため、1月31日までであれば年末調整で、それ以降であれば確定申告で所得控除を受けましょう。
4.医療費から控除しなければならない入院給付金・高額療養費等について
医療費控除を受ける場合に、入院給付金・高額療養費等は医療費を補てんする金額として差し引く必要がありますが次の点を考慮しておくとよいでしょう
・控除する場合はその給付の対象となる医療費からのみでよい
たとえば、入院給付金は入院にかかる医療費からのみ控除すればよく、外来診療による医療費・他の医療機関の医療費からは控除する必要はありません。
・還付申告を行おうとする場合(「確定申告をしてもいい人」に該当する場合…前回のコラム参照)で、入院給付金・高額療養費等が翌年3月15日までに確定していない場合は、確定後の3月16日以降に確定申告書を提出してもよい。
5.相続税の取得費加算
相続又は遺贈により取得した財産を、相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年以内に譲渡した場合は、その相続又は遺贈により負担した相続税額のうちその譲渡した資産に対応する金額(※)が、譲渡所得計算上取得費に加算されることにより譲渡所得から控除されます。
※ 平成26年12月31日までに開始した相続等により取得した土地等の場合は、その相続等により取得したすべての土地等に対応する金額
注意すべきポイント
1.年末調整で受けた扶養控除が、実際は要件に該当しないことが判明した場合は確定申告で修正が必要
知っておくとよいポイントの2.の反対のケースです。もしご自分で確定申告をせずにそのまま放っておくと、勤務先に翌年の夏から秋頃に「扶養控除等の控除誤りの是正」という書類が届き、勤務先で年末調整の再計算をすることになり勤務先に迷惑をかけることになります。
2.生命保険会社などから受け取る個人年金は確定申告が必要な場合がある
個人年金契約で、支払った保険料と受け取る年金額の差額は所得税の課税対象となる所得に該当します(所得区分は雑所得)。また、たとえ支給時に源泉所得税が差し引かれていても、「確定申告をしなければならない人」に該当する場合(前回のコラム参照)は、確定申告をしなければなりません。
3.上場株式等に係る譲渡損失の損益通算と繰越控除の注意点
・証券会社で特定口座のうち源泉徴収選択口座を所有している方がこの適用を受けずに翌年の3月15日までに確定申告書を提出してしまった場合は、「納税者が適用を受けないことを選択した」とみなされ、3月15日後に申告内容の訂正を税務署に求めることができないため、源泉徴収選択口座をお持ちの方は注意しましょう。ただし、一般口座・簡易口座の場合は可能です。
・特定口座内の所得は、配偶者控除(又は配偶者特別控除)・扶養控除の対象となっている配偶者・親族の方のその判定となる合計所得金額に含まれませんが、その配偶者・親族の方がこの適用を受けるために確定申告を行うと、その申告に係る所得は合計所得金額に含まれることとなり、配偶者控除・扶養控除の対象とならない場合があります。また、国民健康保険税等の対象となる所得にも含まれることとなります。
4.住民税の申告義務との違いに注意
所得税の確定申告を行う方は住民税の申告は必要ありませんが、前回のコラムで「確定申告をしなければならない人」に該当し所得税の確定申告をしない場合でも、住民税の申告は必要です。